100年 MUSIC featuring Artist

Vol.1 Superfly

「心の旅のなかから生まれた曲たち (後編)」

 6月15日に発売され、あちこちで最高傑作と評価されているSuperflyの3rdアルバム『Mind Travel』。その1曲1曲に込めた志帆の思いを2回に分けて紹介しているところだが、今回は7曲目の「Secret Garden」から最後を飾る「Ah」までの話を。今回も主に初出となる新曲について長めに聞いた。

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――7曲目の「Secret Garden」。これは今までのSuperflyにはないタイプの楽曲ですよね。
「これが一番冒険している気がしますね。もともとはアベレージホワイトバンドのある曲が好きで、"こういうの、好きなんだよね"みたいな話をしてて、そういうサウンドにしたかったっていうのはあるんですけど。去年の年明けくらいからあった曲で、多保くんは絶対私が気に入るだろうと思って作っていたそうです。アレンジはガラリと変えました。モダンというか、オシャレな感じで」
――モダンなアレンジはもちろん、メロディがもう本当に素晴らしい。
「そう、本当にいいんですよ~、メロディが」
――個人的な感想でなんですけど、僕はアルバムのなかでこの曲が一番好きで。
「(小さい声で)私もなんですよ……。あ~、嬉しい。この曲はもう完成してから何回聴いたかわからないくらいで」
――ヴォーカルもいいんですよねぇ。志帆ちゃんの女性的な面が表現されていて。
「ありがとうございます。やっぱりこういう優しいメロディを優しいサウンドで歌うと、私の声もより女性的になるので。うん、すごく気持ちよく歌えましたね」
――歌詞は子供の頃のことを考えながら書いたもの?
「そうです。実家に庭があるんですけど、おばあちゃんがすごくお花が好きで、いろんなお花がそこに植わってて、私はちっちゃい頃からその場所が好きだったんです。両親に叱られたときも、その庭でひとりでふてくされてみたりしてて(笑)。で、春になると桜が咲いて、その下でプチお花見をしたり。今ではもうないんですけど、柿の木もあって、ともだちが遊びに来ると、その木に座って何を話すでもなく時間を過ごしたり。なんか落ち着く場所なんですよね。保育園の頃とか小学1~2年の頃の自分を思い出させる空間でもあるというか。実際どこかの道を歩いていて、キンモクセイの香りをかいだときにも、実家の庭を思い出したことがあって」
――心の帰る場所みたいな感じなんですね。
「本当にそう」
――"高いヒール履いて仕事へ行こう"っていうフレーズは、これ、OLさんとかも共感できそうなものですよ。
「あ、ホントですか? 頑張ってる女性に向けての曲って感じ?(笑) いや、でも、私もちょっと気合い入れなきゃなってときには高い靴を履いて出かけたりするんですよ。高いヒール、イコール、そういうスイッチを入れるための女性の象徴のような気がしてて」
――なるほど。あと、"嘘のない本当の笑顔の私に帰りたい"というフレーズがあるけど、歌詞のなかに"笑顔"という言葉が出てくることは少なくないですよね。「Eyes On Me」では"照れないで 無邪気な笑顔を見せてよ"と歌っているし。
「そうですね。歌詞を書くのって、自分のことを書く作業じゃないですか?! ということは自分とすごく向き合う作業でもあるので、ひとつひとつ深く考えてしまうクセがついてしまっていて。で、"Box Emotions"を作ってるときには人と人との関係性においての感情を多く書いていたんですけど、今回は花とか太陽とか、自然から自分のことを教えられることが多くて。この曲もそうですけど、花の香りから実家の庭のこと、昔の自分のことを思い出して、あの頃は無邪気に笑っていたけど今の自分の笑顔はどんなだろうな……って考えたりして。もちろん大人になったら協調性もつけなきゃいけない。けど、それは本当の自分なんだろうかとか、そういうことをいろいろ考えちゃってるんですよね」
――でも、最後のフレーズは「この街で 高いヒール脱いだ 今の私を 愛してみよう」ですからね。昔の自分を思い出しながらも、またここから歩いていこうという決意が窺える。
「はい。そうですね(笑)」
――8曲目は「Sunshine Sunshine」。この曲は(3・11以降)、特別な曲になりましたよね。
「今、こういう(震災後の)状況で聴いたり歌ったりすると、ちょっと自分で泣きそうになってしまうところがあります。"Sunshine ~Sunshine~"ってところは多保くんがデモの段階でとりあえず音に乗せるためにつけてた仮の言葉だったんですよ。でも私はこの言葉じゃないと絶対ダメだと思って、そのまま残したんです。音と言葉が一体になってるし、それは希望の言葉のようにも感じていたので。本当に今、この曲がすごく胸にきますね」
――続いて9曲目が「Morris」。
「お父さんがフォーク好きで、今も弾き語ったりしてるんですけど(笑)、そのお父さんが持っていたギターがモーリスで」
――かつてフォーク・ブームの頃、みんなモーリス・ギターを買ってましたからね。"モーリス持てばスーパースターも夢じゃない"ってアリス時代の谷村新司が言うCMがよくラジオで流れていて。
「へぇ~。じゃ、お父さんもそれで使ってたのかな(笑)」
――この曲はいつ頃に作ったんですか?
「実はこれもデビュー前にあった曲で。歌詞もほとんどこのままです。多保くんがまず曲を作って、なぜか"お父さんのことを歌ってみれば?"って言われて、そのときは"照れくさいからいいよ~"って言ってたんですけど、そのあとで私もスイッチが入ってしまって書きました。今回ほとんどそのときのままで歌ったのは、今の思いで書き直すとまた違った感情が入ってしまいそうだから」
――これまでとっておいた理由は?
「う~ん、特にとっておこうと思ってたわけではないんですけど、タイミングが合うときがなかったので。でもこのアルバムにはサウンド的にも合ってるし、今回は自分の心のルーツみたいなところを表現するアルバムにしたかったので、これは絶対入れようと思ってたんです」
――そして10曲目「Wildflower」。この曲の置き場所は難しかったんじゃないですか?
「難しかったですね。始めのほうに入れるのがいいのか後半に入れるのがいいのかずいぶん悩んだんですけど、やっぱり自分の心のルーツを表現した曲が真ん中らへんに集まっているので、その真ん中の部分を最後にキュッと締めるのにいいかなということで、ここにしました」
――この曲って、ほかのどの曲にも似てないし、すごく個性の強い曲ですよね。
「そうですね。しかもメロディと言葉がすごく寄り添いあっている曲だと思うし。歌いたいこととメロディが寄り添っていることの大事さを気づけた曲でもあるんですよ。これがあったから作れたという曲もいくつかあるし」
――長く歌い続けてほしい曲です。
「はい。大事にしていきたいですね」
――11曲目は「Free Planet」。これは去年のフェスでも必ず歌ってたし、気がつけばライヴに欠かせない重要曲になってますよね。
「お客さんもこの曲のイントロが始まると、ほかの曲では見られないくらい盛り上がった反応をしてくれるので。ロック好きな人ってやっぱり多いんだなぁと、ライヴで歌ってて思いました」
――ギター・ソロも盛り上がるし。
「ギター・ソロは大事です(笑)」
――12曲目は「悪夢とロックンロール」。
「これは多保くんのなかで自然発生的に出来た曲のひとつなんですけど、聴いてたら歌いたくなったので入れました。こういう、いつでも気軽に聴けるようなロックもアルバムには入ってたほうがいいので」
――ストーンズにしても、必ずアルバムのなかに能天気な曲を入れてきますもんね。
「そうそう。重い曲ばかりだと疲れちゃうので、能天気な曲も必要なんですよ(笑)」
――次の「Only You」は作詞作曲の両方をご自身で手掛けていて。やっぱり多保くんのメロディとは違って、どことなく女性的なニュアンスがありますね。
「女性のシンガー・ソングライターが書くような女性的なメロディが好きなんですよね、やっぱり」
――ライヴにおいては、「I Remember」のようにグッと入り込んで歌えそう。
「そうですね。この曲が一番エモーショナルに歌えるんじゃないかと思う」
――そして最後が「Ah」。これはどんな思いで作った曲なんですか?
「本当に悲しくて辛いなって思うときって、私もそうなんですけど、言葉にできないものじゃないですか? 本当は聞いてほしくてたまらないけど、言葉にしないほうがいいっていうか。でもひとりでそれを溜めこむと、蓄積されて、いつか爆発してしまうんじゃないかと思って……。そうならないようにするにはどうすればいいんだろって考えたときに、小さく溜息をつくんじゃなくて、大きな溜息にして想いを解き放てばいいって思ったんです。小さな溜息をつくと幸せが逃げるって言うけど、心のヨガみたいな感じで大きな溜息にして想いを解き放つことができればいいんじゃないかって」
――そもそも言葉にしきれない思いがあるからこそ音楽をやるんですもんね。
「そう。まさにそういう思いを書きたいんだって多保くんに説明して。最初はちょっと理解してもらえなかったんですけど、じっくり説明して、"そういう神秘的な曲を作りたいんだ"って話をしたらこんなに美しい曲を作ってくれたっていう。これは歌詞ありのヴァージョンもあるんですけど、同じときに教会で歌って録って。天井が高くて響きのいいところで歌いたかったんです」
――この曲でアルバムが終わるという、そのこと自体に大きな意味があるように感じられます。
「はい。これは絶対、一番最後に入れたかった曲なんです」

取材・文/内本順一

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Mind Travel

Superfly
3rd Album
"Mind Travel"
2011.06.15 Release


初回限定盤<CD+DVD> WPZL-30278/79  ¥3,619(本体)+税
[初回特典DVD内容]
全10曲ミュージックビデオ-DVD

通常盤<CD> WPCL-10952 ¥3,000(本体)+税

http://wmg.jp/superfly/

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