100年 MUSIC featuring Artist

Vol.2 Nile Rodgers

「"ダンス"という言葉に込めたメッセージ」

 長年のパートナーであったバーナード・エドワーズが日本で息を引き取ってから15年経った今年4月。ナイル・ロジャースは、シックの全シングル曲から自身がプロデュースしたさまざまなアーティストのヒット曲までを収めた2枚組のアルバムを日本限定でリリースした。
クール・アンド・ザ・ギャングと共に録音した新曲「アイ・ウォナ・ダンス」を含むこのアルバムのタイトルは、『エヴリバディ・ダンス!』。言うまでもなくシックのデビュー曲と同タイトルだが、しかし日本の現在の状況を踏まえればなおのこと、この"エヴリバディ・ダンス!"という言葉がナイルからの強いメッセージとしても響いてくる。ブックレットにはナイルのこんな言葉も載っている。「僕はこのアルバムを日本の友に捧げる」。
ナイルの考える「ダンス」という言葉の意味とは? ナイルの考える「ダンスミュージック」の意味とは? それを語ってもらった。

Page.2

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――アルバム『エヴリバディ・ダンス!』についての話を聞かせてください。
「うん。この2枚組アルバムを企画したのは、バーナードが日本で他界してから15年が経つこの年に何か特別なことをしたいという思いがあったからでね。アメリカでは5年、10年、15年……というふうに、5年単位で区切って何かすることが多いんだ。因みにこのCDは日本限定でリリースされたもの。マドンナやデヴィッド・ボウイやダイアナ・ロスらには僕から直接電話して、特別に楽曲の使用許諾をもらった。マドンナの"ライク・ア・ヴァージン"やデヴィッド・ボウイの"レッツ・ダンス"は、普通なら絶対にライセンス許諾の下りない曲なんだけど、"バーナードのために力を貸してくれないか?"と直接僕から頼んだら、みんな快くOKを出してくれたよ」
Nile Rodgers
――このアルバムには新曲も収録されてますね。
「クール・アンド・ザ・ギャングと一緒に録った"アイ・ウォナ・ダンス"を収録できたのはとても意義のあることだ。実はこの曲を制作していた去年の秋に癌を宣告され、一旦作業をストップした。結局今年1月の手術後、マスターの納品日が目前という段階になってマサタケさん(日本のワーナーミュージックの担当プロデューサー)に連絡し、"2日で仕上げるから"と待ってもらえるよう頼んで、なんとか間に合わせることができたんだ」
――「アイ・ウォナ・ダンス」。もう一回ダンスしたいんだという強い気持ちが表れているタイトルのようにも思えますが。
「シックの曲はどれもタイトルにいろんな意味を込めている。ダンスという言葉自体にもいろんな意味を込めているんだ。デビュー曲のタイトルは"エヴリバディ・ダンス"。次のヒット曲は"ダンス・ダンス・ダンス"。ほかにも"グレイテスト・ダンサー"という曲があったりと、ダンスという言葉は昔から多用していた。でも、ディスコ・サックス(ディスコの大ブームが去ったあとに訪れた、"ディスコなんてクソだ"というような風潮)の頃から、僕はダンスという言葉を使うのをやめるようにした。ところがそんな状況下にあって、僕がプロデュースを担当したデヴィッド・ボウイのアルバム『レッツ・ダンス』がものすごいヒットを記録しちゃってね。で、僕はやっぱりダンスという言葉から逃れられないんだって気づいたんだよ。家族から逃れられないのと同じで、僕の人生において"ダンス"や"ダンスミュージック"は切っても切り離せないものであり、そのくらい大切な……言うなれば生き甲斐なんだってわかったんだ。僕ももうすぐ60歳だけど、ステージに上がれば今でも踊ってしまうし、最高の気分になる。とにかくダンスが大好きだから、生涯ずっと踊り続けたいね。別に最新のダンスについていけなくてもかまわない。アイ・ウォナ・ダンス。僕は僕のダンスをしていれば気分がいいから、それでいいんだ」
――「ダンス・ダンス・ダンス」にしても「エヴリバディ・ダンス」にしても、今のような日本の状況下で聴くと、「そうだ、僕らは立ちあがってダンスしなきゃ!」という気持ちにもなります。とても強いメッセージとして受け取ることができるんです。
「うん。さっき話したように(*インタビューの1回目参照)、ニューオーリンズの葬式がそういうものだった。葬式の直後にみんなで踊るんだ。踊るという行為には深く精神が関わってくる。生命の祝福とでもいうのかな。だから、かっこよく踊れなくたって別にかまわない。僕らのライヴに来てくれるお客さんを僕が素晴らしいと感じるのもまさにそういうことで、高齢の人もみんな立ち上がって踊ってくれている。最高だね。若い頃はあたりまえのように踊っていたのに、歳をとって家庭をもつと控えめになっちゃって踊らなくなる……っていうのは、つまらないじゃないか。数ヵ月前にイギリスでコンサートがあったんだけど、そのときは60代半ばくらいの女性たちが床にバッグを置いて、輪になって踊っていたよ。彼女たちは10代の頃に踊ったのだろうステップを踏んでいて、それはとても美しく、セクシーとすら思えるくらいだった。僕は思わず泣いてしまったよ。孫ができてもダンス・スピリットは忘れなかったんだろうね。かつてヨーロッパでは、人々は年齢に関係なくメヌエットやガヴォットといったクラシック音楽に合わせてダンスしていた。アメリカ文化においてもスクウェアダンスからカウボーイダンスまで、年齢に関係なくみんなが楽しんでいた歴史がある。人々の人生がそういうものであってほしいと僕は願っているんだ」
Nile Rodgers
――「ダンス・ダンス・ダンス」も「エヴリバディ・ダンス」も30年以上も前の曲ですが、今も人々を立ち上がらせ、躍らせる力がある。曲を作った頃には、そういうふうになるなんて考えていなかったのでは?
「というか、そもそも自分がアーティストとしてここまで長続きするとも思ってなかったからね(笑) 当時はクレイジーな生活を送っていたから、長生きできるとも思ってなかったし。刹那的というか、その一瞬一瞬を楽しんで生きていたんだ。曲にしても、"長く残る曲を作りたい"というより、単に"できる限りいい曲を作りたい"と考えていただけで。あ、でもひとつ言っておくと、シックの曲の内容って、みんなが思っているほど単純ではないんだよ。"さあ、みんなで踊ろう。手拍子をとって(Everybody dance,Clap your hands,Clap your hands)"っていう歌詞は単純なものに思えるだろうけど、実はちゃんとメッセージが含まれている。単純なことを単純にさらっと書くのもいいけど、僕らはそんなふうにはできなかった。メッセージを伝えたいという気持ちもあったからね。それは今、僕と君が日本の震災について話したり、僕の癌のことを話したりしているのと近いところがある。"エヴリバディ・ダンス"の歌詞には、"音楽は君をがっかりさせたりしない(Music never let you down)"とあるし、"ダンスは痛みを鎮めてくれる(dancing helps relieve the pain)""心を和らげ(soothes your mind)""再びハッピーな気持ちにさせてくれるのさ(makes you happy again)"と続いていくのだからね。で、"スウィングしなけりゃ意味がない(But it don't mean a thing,if it ain't got that swing)"とも歌われるわけだけど、そのくだりはデューク・エリントンやキャブ・キャロウェイへのトリビュートさ。シックはオールド・ファッションなものをモダン・アレンジで甦らせるってことも目指していたからね」

(4月15日、青山ブルーノート東京にて)
取材・文/内本順一

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Profile

ナイル・ロジャース。1952年9月19日、ニューヨーク生まれ。1977年にファンク~ダンス・バンド、シックとしてデビュー。「おしゃれフリーク」「グッド・タイムズ」という2曲の全米ナンバー1ヒットを放ったほか、多くの名曲でディスコ・ブームを牽引。ベーシストのバーナード・エドワーズとの作編曲・プロデューサー・コンビとしても評価され、シックがバックの演奏を受け持つ形でダイアナ・ロスやシスター・スレッジらの曲を手掛けてヒットさせた。1983年からしばらくはプロデューサー活動に専念し、デヴィッド・ボウイ『レッツ・ダンス』、マドンナ『ライク・ア・ヴァージン』、ミック・ジャガー『シーズ・ザ・ボス』といったアルバム及びシングルをヒットさせた上、デュラン・デュラン、フィリップ・ベイリー、アル・ジャロウ作品なども担当。1992年にはシックを再結成させ8年ぶりのアルバムをリリース。1996年には日本企画のイベント「スーパー・プロデューサー・シリーズ」のためにシックを再編して初来日し、以後、コンスタントに来日を重ねている。現在58歳。昨年、前立腺癌が発覚し、今年1月に手術をした。

EVERYBODY DANCE! produced by the Hit Maker NILE RODGERS

NILE RODGERS(Produce)
エヴリバディ・ダンス!
"EVERYBODY DANCE! produced by the Hit Maker NILE RODGERS"


WPCR-14103/4(2CD) ¥3,314(本体)+税 now on sale
■日本企画。ナイル・ロジャース・プロデュース作品
■日本のディスコ・ブームを牽引したシックの大ヒット曲と、シックの中心メンバー(ギター):ナイル・ロジャースがプロデュースし世界的にヒットしたアーティストの作品を2枚のCDに収録。
■マドンナ、、デヴィッド・ボウイ、ダイアナ・ロス、デュラン・デュラン、トンプソン・ツインズ、アル・ジャロウ、B-52's、シスター・スレッジ等、ナイルのプロデュース大ヒット作品を多数収録!
http://wmg.jp/artist/nilerodgers/
ナイル・ロジャース/エヴリバディ・ダンス!
http://wmg.jp/nilerodgers/

ダンス・ダンス・ダンス[リマスター2011]

CHIC
ダンス・ダンス・ダンス[リマスター2011]
"CHIC"


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エレガント・シック[リマスター2011]

CHIC
エレガント・シック[リマスター2011]
"C'EST CHIC"


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危険な関係[リマスター2011]

CHIC
危険な関係[リマスター2011]
"RISQUE"


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