100年 MUSIC featuring Artist

Vol.2 Nile Rodgers

「自身の選ぶ100年MUSICとその背景」

 時の風化に耐えうる力を持った音楽……「100年MUSIC」。前回はどのようにしたらそういった曲を生み出すことができるのかをナイルに語ってもらった。そして今回はナイル自身に自らの「100年ソング」を選んでもらって、その理由もあわせて訊いた。4回に亘ってお送りしてきた「100年MUSIC featuring Artist ・ナイル・ロジャース編」、その最終回。"あの名曲"の生まれた背景を知っていただきたい。

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――100年MUSIC。時代が変わろうとも、変わらない力を持ったタイムレスな音楽を、当サイトではそう呼んでいます。そこでお訊きしますが、シック、またはあなたの手掛けた曲のなかで、これは100年MUSICと呼んでいいだろうと思うものを挙げてください。
「OK。まず(シスター・スレッジの)"ウィ・アー・ファミリー"。これ、文法的には"we are family"というのはおかしくて、"we are a family"、もしくは"we have a family"というのが正しいわけだけど。でも譜割りにしたとき、"we・are・family"にすれば、"タン・タン・タータタ"でピッタリくるわけだよ。"a"が入ってしまうと、しっくり来なくなるんだ。それで音節を変えたわけ。"we are familyって、文法的におかしくないか?"って言う人もいたけど、"いいじゃないか、これはポップ・ミュージックなんだから"ってことで、僕らは気にしなかった(笑) 僕らは"we are family"という独自のステートメントを発信したんだ。"we are a family=私たちはひとつの家族"ではなく、"we are family=私たちは家族"というふうに大きな単位にしたことで、メッセージ的な深みも出せた。できたときに、これは最高の楽曲だと確信したよ」
Nile Rodgers
――納得です。ほかには?
「う~ん、どの曲も好きだから選ぶのが難しいんだけど……。今パッと頭に浮かんだのは、ダイアナ・ロスのために書いた"アイム・カミング・アウト"。彼女、これを初めて聴いたとき、すごく嫌がっていたのを覚えてるよ(苦笑)。当時の最新音楽といったらニューヨークのゲイ・クラブでかかるアンダーグラウンド・ミュージックだったから、僕は曲作りのヒントを得るためによくゲイ・クラブのなかでもベストな選曲をしていた女装系のクラブに通ってたんだ。で、そのなかでも一番人気だった という女装系ゲイ・クラブに行ったとき、そこのトイレで"ダイアナ・ロスはゲイに大人気"だという事実を知った。用を足して右側を見たらダイアナ・ロスみたいな格好をしたゲイがたくさんいて、"こりゃすごい"って思ってね。で、すぐにバーナードに電話して、"ダイアナ・ロスはどうやらゲイ・アイコンのようだから、ゲイ・コミュニティに通じている言葉を歌詞に盛り込んだら絶対面白いよ"と伝えた。ゲイの人たちが"I'm Coming Out=カム・アウトしちゃうわよ!"って言って喜んでくれるものを作ったら面白いことになるはずだって思ったわけだ。曲ができて、これはそういうアンセムになるだろうと確信したよ。因みにこの曲はダイアナにとって古巣のモータウンから発売する最後のシングルだった。だから、"これまでの人生に別れを告げて新しい環境へと飛び出す"という意味も含ませたんだ。またこの曲はライヴのオープニング・ナンバーとしてもピッタリだと思ってね。"come out"、つまりステージに"登場する"っていう意味でも使えるからさ。あと、ダイアナのシングルだったら必ずラジオでオンエアされる(=come out on radio)わけで、そんな言葉遊びも含んでいる。さっき言ったように、最初は彼女、この曲を嫌がってたわけだけど、結局大ヒットになった。以来、必ずオープニングでこの曲を歌うようになったものだよ」
――面白いエピソードですね。では僕からも1曲挙げさせていただくと、僕にとってのシックの100年MUSICは「僕は自由(At Last I Am Free)」なんです。ロバート・ワイアットのカヴァーも大好きで、自分の人生の節目節目にこの曲を聴いてはいろんなことを考えるんですよ。
「それは素晴らしいね。この曲はまだバーナードと出会うずいぶん前……僕が17歳の頃に書いた曲でね。僕も大好きな1曲だよ。当時セントラル・パークで開催されたブラック・パンサー党のパーティに参加したときの体験を基に書いたものなんだ。そう、それはデモというよりもパーティと呼びたくなるようなものだった。こっちはもうLSDで完全にラリっちゃっててね。で、警官から"そろそろ終わりの時間だぞ"と注意されたんだが、"こんなに楽しいんだから帰んないよ~"って呑気に返したら、いきなりボコボコにされてしまって。僕の親友は頭から血を流してたよ。で、フラフラになりながらも歩き続け、どうにかこうにか公園を出て、そのときに"やっと自由の身だ(=At Last I Am Free)"って思わずつぶやいてたんだ。で、シックの曲にはいつもいくつかの重層的な意味を含ませているわけだけど、この"やっと自由だ"という言葉には、"やっと公園の出口に辿りつけた"というそのときの思いに重ね、ブラック・パンサー党としてアフロ・アメリカンの自由のために闘ったことや、ベトナム戦争の終焉、女性解放運動やゲイ・ムーヴメントの始まりについての思いも含ませている。そういう政治的な曲なんだよね。その後バーナードと出会って、一緒に結成したロック・バンドではこの曲をパワー・ロックふうに演奏していたんだけど、シックを始めるようになってからこのようにソウルっぽくてもの哀しいバラードにして演奏するようになった。アルファ・アンダーソンの歌う"I'm lonely、Please listen to what I say(=お願いだから孤独な私の話を聞いて)"という箇所を聴いたときには、あまりにも美しくて涙してしまったよ。彼女が歌ったことでこの曲はまったく違う内容の美しい曲に仕上がった。因みにアメリカが自由を勝ち取るべくイギリス軍と戦った独立戦争で"イギリス軍が来たぞ、武装せよ"とみんなに知らせたことについて書かれた有名な詩(注:詩人のヘンリー・ワーズワース・ロングフェローによって書かれた「ポール・リビアの騎行」)の最初の一節が"Listen my children,and you shall here(子供たちよ、聞こえるかい?) / Of the midnight ride of Paul Revere(ポール・リビアの真夜中の騎行が)"と始まるんだけど、"僕は自由(At Last I Am Free)"の歌詞の最後にでてくる"Please listen to what I say"はそこからヒントを得ているんだ」
――本当に哀しいくらい美しい曲です。
「うん。因みに"I'm lonely,Please listen to what I say"という箇所を書いたのはバーナードだった。僕の作ったロック・ナンバーをこのように美しいラヴソングとしてアレンジし直したのもバーナード。まったく彼の才能には驚くよ。バーナードは僕の人生にもっとも影響をもたらした男で、僕は曲作りにおいても彼から多大な影響を受けている。彼の考え方は自分の心のなかに沁みついているから、不思議な感じなんだけど、今でも一緒に生きている気がしてるんだ」

取材・文/内本順一

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Profile

ナイル・ロジャース。1952年9月19日、ニューヨーク生まれ。1977年にファンク~ダンス・バンド、シックとしてデビュー。「おしゃれフリーク」「グッド・タイムズ」という2曲の全米ナンバー1ヒットを放ったほか、多くの名曲でディスコ・ブームを牽引。ベーシストのバーナード・エドワーズとの作編曲・プロデューサー・コンビとしても評価され、シックがバックの演奏を受け持つ形でダイアナ・ロスやシスター・スレッジらの曲を手掛けてヒットさせた。1983年からしばらくはプロデューサー活動に専念し、デヴィッド・ボウイ『レッツ・ダンス』、マドンナ『ライク・ア・ヴァージン』、ミック・ジャガー『シーズ・ザ・ボス』といったアルバム及びシングルをヒットさせた上、デュラン・デュラン、フィリップ・ベイリー、アル・ジャロウ作品なども担当。1992年にはシックを再結成させ8年ぶりのアルバムをリリース。1996年には日本企画のイベント「スーパー・プロデューサー・シリーズ」のためにシックを再編して初来日し、以後、コンスタントに来日を重ねている。現在58歳。昨年、前立腺癌が発覚し、今年1月に手術をした。

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エヴリバディ・ダンス!
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■マドンナ、、デヴィッド・ボウイ、ダイアナ・ロス、デュラン・デュラン、トンプソン・ツインズ、アル・ジャロウ、B-52's、シスター・スレッジ等、ナイルのプロデュース大ヒット作品を多数収録!
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