100年 MUSIC featuring Artist

Vol.4 山下達郎

「この時代と、そして人生に向き合い、
今どのような音で、何をどう歌うべきか」

 10日に発売された6年ぶりのニュー・アルバム『Ray Of Hope』。これまでの作品と比べると今回は特にトータリティーがあり、1枚から強いメッセージを感じとることができるアルバムだ。真ん中で「俺の空」というヘヴィーなファンク・チューンがギラついた輝きを放ってはいるが、それを除けば基本的にはバラードばかり。今という時代や世相と、今の人々の心情に寄り添い、癒し、励ますような曲が、繋がりあいながら柔らかに響いてくる。
 デジタルを駆使しながらもアナログ的な温もりをもって伝わってくる音。明確な意志のある、指標となる言葉。どういった思いからこのように"アルバム力"といったものを強く感じさせる作品になっていったのか、今回はそのあたりを訊いた。

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――達郎さんご自身の手によるアルバムの制作ノートに、「ひとことで表すなら"人生のアルバム"」とあって、確かにそうだなと思いました。
「ふふふ。大袈裟ですけどね」
――いやいや。それから「ひとの生き死に、出会いと別れ、そういう歌が大部分になりました」とも書かれていますが、それは、1曲1曲作っていったら結果的にそうしたものが多くなったということなんでしょうか? それとも今回はそういったことを歌いたいという気持ちが念頭にあった上で作り始めたものなのでしょうか?
「それに関してはいろんなファクターがありまして。まず6年前に作った前作の『SONORITE』と、その7年前に作った『COZY』っていうのがあって、まぁ13年で3枚しか出してないわけですけど(苦笑)。
 『COZY』は50代に入る取っ掛かりとして作ったものなんですけど、40代半ばから50代にさしかかってくると、ミュージシャンもいろんなことを考えるようになるわけですよ。僕は歌手なので、人気が続くかとかそういうことよりも何よりも、声がいつまで出るかっていうことが非常に重要でね。50代になって1音下げて歌っている人もざらにいますけど、それはしたくない。じゃあ、声が出るあいだにやれることは何かって考えると、いままでと違うこと。つまり新機軸とかよく言いますけど、そういうものをやれる間にやっておこうという気持ちになるんですね。『SONORITE』はその極致でね。カンツォーネだ、レゲエだと、いろんなことに手を出して、バラエティーに富んでるといえば聞こえはいいけど、要するに"ごった煮"になってしまったとも言えるわけです。
 実は、前にもそういうアルバムがあって、それは25才の時に作った『GO AHEAD!』。あの時はレコードがあまり売れなくて、これはたぶん自分の最後のアルバムになるだろうと、それならやりたいことを全部つっこんで終わりにしようって思って作ったの。だからこれも非常に"ごった煮"感満載のアルバムでね。当時のファンには「まとまりがない」と言われたもんです(笑)
 今回は前作の反省から、もうちょっとまとまりのあるものを作ろうと。それは始めの段階で思ってました。だから今回は、自分のキャラじゃない曲はやってないんです。おおよそ自分の本来のテイストに沿って作っている、非常にシンガーソングライター的なアルバムなんですよ。その上、僕ももう50代後半になってきて、人の生き死にとか、自分はどこから来てどこへ行くのかとか、そういうことを否応なしに考える年齢になったんですよね。(竹内)まりやも「人生の扉」なんていう歌を作ってますけど。まぁ、人生を考える、っていう。子どもの頃は、無限の未来があるからそんなこと関係ないですけど、僕らくらいになると、もう人生も夕方あたりに差しかかってきているので、どういう内容を歌うのかっていうのは非常に重要かつ難しい問題なんですよね。特にこうやってロックンロールで生きてきた人間がどういう曲を作るのかっていうのは難しい。親の介護の歌とか作っても、しょうがないしね(笑)」
――そうした歌詞のあり方や、表題曲のプレリュードとポストリュードで曲をはさむという構成を含め、今回はトータリティーあってこそ伝わってくる強いメッセージのようなものが感じられました。
「オーディオ的な部分も相当大きいと思いますよ」
――そうですね。それも大きいんでしょうね。
「ようやくそのへんも落ち着いてきたっていうかね。デジタルの機材環境が勝手に進んで、誰もあれに変えてくれって頼んだ覚えもないのに、周りが勝手に変わっていって、それを使えって言われて。誰が地デジにしてくださいって頼んだんだ?! っていうのと一緒でね。それで前作のときは相当たいへんだったんですけど」
――そうしたデジタル録音との格闘が前作で一段落して、今回は達郎さん自身が楽しみながら録音している感じが伝わってくるようでした。
「そうですね。ようやくレコーディングのコツを掴んできたんで、また詞と曲に立ち返って、編曲のディテールとかにも集中できるようになったわけです。何せ6年前はそれどころじゃなかった。思うように音が鳴らないんだから。シャウトがシャウトに聴こえない。そんなのばっかりでしたからね」
――それから今回は、達郎さんが打ち込みで作られている部分と、信頼するミュージシャンの生演奏の部分との割合も絶妙だなと感じたのですが。
「もうちょっと生演奏部分を増やせるとは思いますけどね。ドラマの主題歌とか映画の主題歌が多いので、そのへんがなかなか。特に今、テレビドラマは締め切りがものすごくタイトなんですよ。そうするとね、普通のリズム隊でやるとなると、トライ&エラーが多いので間に合わなくなるんです。そこを打ち込みでやれば、編曲的に確実に時間が読めるので、どうしてもそうなっちゃう。「ずっと一緒さ」(フジTV系ドラマ『薔薇のない花屋』主題歌)なんかがそうですね。TVドラマの主題歌は特にそのへんが難しい」
――そうした時間的な制限がなければ、もっとナマでやりたいという感じなんですか?
「うん。できればそうしたいですね。スカパラとかね。あとイスラエルのバンドでアップルズって知ってます? ああいう感じくらいまでいければいいなって思ってますけど。でもなかなかそこまではね。バンドじゃないから。みんな各々ほかの仕事をやっているミュージシャンたちですからね」

取材・文/内本順一

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Ray Of Hope

山下達郎
New Album
Ray Of Hope
2011.8.10 on sale


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¥3,333(本体)+税 WPCL-10964/5
通常盤:
¥3,000(本体)+税 WPCL-10966

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http://wmg.jp/tatsuro/

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