100年 MUSIC featuring Artist

Vol.5 BONNIE PINK

3・11を経て変化した意識と、
「The Sun Will Rise Again」。

 "3・11"のあと、ミュージシャンの多くは今一度音楽のあり方、音楽で何ができるかを自らに問い、逡巡したり、熟考したり、決意したりしながら、それぞれのやり方で行動を起こしたり、それぞれの表現をしたりした。BONNIE PINKはといえば、震災直後に書き下ろした楽曲「The Sun Will Rise Again」を、早いタイミングで配信リリース。販売サイト手数料を除いたダウンロード売上全額を日本赤十字に寄付した。また、ミュージシャンとしてではない形での行動もBONNIEはとったわけだが、それによって何を考え、今はどういう気持ちでいるのか。9月21日にリリースされるニュー・アルバム『Back Room』の話の前に、まずはそこを確認しておきたい。

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――3・11があってから、「The Sun Will Rise Again」の配信に至るまでの気持ちの動きを、まずは話していただけますか?
「はい。私は、阪神・淡路(大震災)のときは京都で経験していて、で、今回は東京にいたんですけど、やっぱりとてつもないショックで。本当に打ちひしがれて、寝ないでテレビのニュースを見ては号泣する日が何日か続きました。でも、"何かしないと"っていうことは直後に思って、事務所の人にメールしたりしてたんですね。その"何か"がチャリティ・ライブなのか義援金を送ることなのかはわからないけど、"とにかく考えつくことは全部やろうよ"って、マネージャーを始め事務所の人たちに一斉メールして。そうしたらみんなが反応してくれて、"こういうことができると思います"って返信がたくさんきたんです。で、私は私でwebの日記に、"今、私はこういう感じです"って状況報告の文章を書いて、その日記のタイトルを"The Sun Will Rise Again"って付けたんですよ。3月12日だったかな。その文を書きながら、このタイトルで私は曲を書かないとダメだって思ったんです。で、同時にメロディも歌詞もふわ~っと浮かんできて。
 ただ一方で、今は曲を書いたり歌ったりしている場合じゃない…っていう気持ちもあったので、そのときは音源にはしなかったんですよ。優先順位を考えたときに、今やるべきことは音楽じゃない、ミュージシャンである前にひとりの人間としてやるべきことがあるって思って。そんななか、キャンドル・ジュンさんが"LOVE FOR NIPPON"という支援チームを立ち上げるという話を聞いたので、私も申し出て、ボランティアに行くことを決めて。意識はもうガッとそっちのほうに行ってたんですね。曲に関しては、ちゃんとそれが有益な形で活かされないと意味がない。そうじゃなきゃ発表してもしょうがないと思っていたので、いいタイミングがきたら完成させるつもりでいて。
 そんな話をしていたら、"チャリティ・ソングとして配信だけでリリースするんだったら、すぐにできるよ"と言われ、"だったら"と思って、家ですぐに録ったんですよ。それはデモ・テープのつもりで録ってたんですけど、そこからまたミュージシャンを集めてスタジオに入ってってやってたら、時間もお金もかかるし、電気も食う。それはなんか違うんじゃないかって思ったし、だったらデモ・テープのまま出すのでもいいんじゃないかって思えてきて、で、ディレクターに相談して、次の日にミックスだけやってもらって、それで配信したのがあの曲で」
――地震のあった10日後くらいにはもう配信されてましたよね。
「そうですね。早すぎるんじゃないかとか、いろいろ考えたところはあったんですけど……」
――いや、あのタイミングしかなかったと思いますよ。あのタイミングで配信されたことによって、救われた気持ちになった人はたくさんいたと思う。僕もそうだし。
「であればいいんですけど。でも、コメントのところに"売名行為"って書いてくる人もいたりして」
――ええっ?!  信じられない。酷いですね。
「うん。私としてはいかにも"チャリティ・ソングです!"って感じで大袈裟に出したくはなかったから、あんまり説明もつけないで、曲と歌詞だけポンと載せたんですけど、それでもそういうふうに書いてくる人がいたから、悲しい気持ちになっちゃって。どーんと落ちましたね。なんていうか……私はずっとソングライターとしてやってきてるから、あのときに曲が閃いちゃったのは仕方ないことなんですよね。仕方ないっていうのもヘンですけど、あの衝撃を受けて何も感じない人なんていないと思うし。で、私は曲を書く人間なので、そのときの衝動を忘れる前に曲にして記録しておかなきゃと思うわけですよ。発表するしないに関わらず、そのときの気持ちを記録しておかなきゃいけないと思うのは当たり前のことで。音楽に関わらず、表現をする人はみんなそうだと思うんですよね。で、この曲はそうやってあのときに感じた思いを純粋な気持ちで書いたものだし、被災地の人がすぐには聴けない状況にあったとしても、無事だった人がダウンロードすることによって義援金として支援になるし、そうやって繋がることが大事だと思ったので、ああいう形で発表したわけなんですけど……」
――その思いはちゃんと多くの人に伝わってますよ。くだらない書き込みする人は、いつだってそういうことを書くわけで。
「うん。まわりの人にもそう言ってもらえたので、気にしないようにしようと思い直したんですけどね。それが3月のことで。あ、あと、4月にはファンクラブ・イベントを予定してたんですよ。でも地震がきて、しばらく余震も続いてたし、これは今やるべきじゃないってことで東京だけ延期にして。でも大阪のほうは、考えた末にやろうって決めたんですね。そこで募金箱を置いたり支援物資を集めたりもできるなと思ったし、"私は元気で頑張ってるよ"ってファンの人たちに伝えたかったっていうのもあって。それと、私自身がパワーをもらいたかったから。それで開催したら、みんなたくさん支援物資を持ってきてくれて、義援金にも協力してくれて。そのライブの最後に"The Sun Will Rise Again"を歌ったんですよ。それはみんなで一緒に歌いたいという思いがあったから、みんなをステージにあげて、私がギターを、奥野(真哉)さんがキーボードを弾いて、大合唱したんです。いずれ被災地の方がなんらかの形でそれを目にして、少しでも頑張れる気持ちになってくれたらいいなという思いがあったから、その様子を動画で撮って、アップして。そういうことができたのはすごくよかったですね。で、延期にした東京のほうは、6月11日に改めてやることができて」
――とにかく、じっとしてないで"自分から動く"ということをしていた。
「そうですね。でも3月・4月は、ミュージシャンとしてとかじゃなくて。4月に宮城に炊き出しに行って500食ぐらいのご飯を盛ったりしてたんですけど、そのときに思ったのは、"今必要なのはこれだな"っていう。職業とか取っ払って、とにかく動けるカラダがある人は、動きたくても動けない人のために力を貸す。それを最優先させるべきだという意識があったんですね。だからそのときは、新作がどうのとか言ってる場合じゃないって感じだったし。ミュージシャンであることは置いといて…っていう気持ちが強かった。奥野さんともよくそういうことを話すんですけど、その頃に"今はミュージシャンはグッと我慢すべきときだと思う。でも音楽が必要とされるときは必ずくるから、そうしたらまた一生懸命ライブをしに行こう"ってメールをくれて、すごく励まされたし、共感したし。原発の話もよく奥野さんとするんですよ。私の関心事もそっちに行っちゃったので、ap bankが開いてるフォーラムにも毎回参加するようになったりして。で、そういうなかで強まっていった私の気持ちはというと、ミュージシャンっていうのはただの一つの肩書きであって、今問われているのは、いかにインディペンデントにみんなが未来を作っていくか。自分で選択して生きていくということをちゃんとやっていかないと未来はないぞ、っていう。そういう気持ちが強くなって、で、そういうことを考えていたら、不況でCDが売れなくなったとか、私はこれからどうやって音楽を続けていけばいいのかとか、しばらくモヤモヤ悩んでいたようなことが全部すっとんじゃったんですよ。なんかもう生きてるだけでラッキーっていうか、こうして生かされているということの大切さをしっかり感じながら、自分の持てる力をフルに活かして前進していこう! っていう気持ちになって。なんか、生きているという実感が前より強く持てるようになったというか」
――その実感が音楽にもストレートに返ってきますからね。
「そうそう、そうなんですよ。本当に」
――新曲を作ることだけが音楽ではない。音楽は分かち合うためにあるというか。いろいろ行動していくなかで得たそういう実感が、新作『Back Room』にも繋がっていったところもあるんでしょうし。
「そうですね、うん。ありますね」

取材・文/内本順一

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Back Room -BONNIE PINK Remakes- Back Room -BONNIE PINK Remakes-

BONNIE PINK
New Album
「Back Room -BONNIE PINK Remakes-」


2011.09.21 Release
初回限定盤(CD+DVD)
¥2,857(本体)+税 / WPZL-30316/7

通常盤(CD)
¥2,381(本体)+税 / WPCL-10992

BONNIE PINK、初のセルフリメイクアルバム「Heaven's Kitchen」「Last Kiss」「A Perfect Sky」等数々のヒット曲をアコースティックアレンジで新録したBONNIE PINK初のセルフリメイクアルバム。
新曲1曲を含む全10曲収録。
初回限定盤にはスタジオライブ4曲を含むレコーディング・ドキュメンタリー映像を収録したDVD付。

The Sun Will Rise Again

チャリティソング
配信リリース
「The Sun Will Rise Again」

※ダウンロードでのレコード会社売上の全額を
日本赤十字社に寄付致します。

レコチョク

http://itunes.apple.com/jp/album/id428549702
http://wmg.jp/artist/bonniepink/

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