100年 MUSIC featuring Artist

Vol.5 BONNIE PINK

BONNIE PINKは今どうして
セルフ・リメイク・アルバムを作ったのか

 昨年、BONNIE PINKは11枚目のアルバム『Dear Diary』をリリースし、デビュー15周年を記念するツアーを11月から12月にかけて行なった。それは過去のツアーと比べても、彼女の歌への思いが明確に表れていた素晴らしい内容で、各所での評判も非常によく、彼女自身、確かな手応えを得た。
 ここに完成した『Back Room』は、まさにそのツアーの手応えをそのまま反映させた、初のリメイク・アルバムである。
 なぜ今、リメイク・アルバムなのか。どういった思いからこの企画が立ち上がっていったのか。その動機を話してもらった。

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――昨年はデビュー15周年を記念するツアーがありました。その話をしましょう。
「あれは『Dear Diary』をリリースしたあとのツアーで、本編の最後に"流れ星"を演奏したんですけど、個人的には"流れ星"があのアルバムのベスト・チューンぐらいに思っていて……」
――僕も一番好きです。本当にいい曲。
「嬉しいです。あのあとにファンクラブ・イベントをやって、人気投票をやったんですけど、そこでも"流れ星"が2位だったんですよ」
――おお! ファンの人はちゃんとわかっているっていう。
「そう。ファンの方には私の楽曲のツボというか、そういうものがちゃんと伝わっているんだなぁっていうのがそこで確認できたのは嬉しかったですね。別にシングルとかでもなかったのに。だからあの曲が書けてよかったなって思ったし。なんかこう、セールスがどうのとかとはまた別のところで、ちゃんと聴いてくれてる人には伝わってるんだなって改めて思えたアルバムであり、ツアーでしたね」
――僕も11月の赤坂BLITZ公演を観ましたが、本当にいいライブだった。今まで観たBONNIEのライブのなかでもベストと言っていいくらいに。「ああ、いいライブだったな〜」って素直に思ったし、余韻にも浸れたし。
「やってる私もそういう気持ちになりました」
――2日目は涙も流されて。
「うん。泣いちゃった…」
――どんな思いだったんでしょうね。
「なんですかね、あの涙は。自分じゃうまく分析できないけど、やっぱりファンのみなさんが絶対的に温かい目で観てくださってるのを強く感じるわけですよ。たまたまちょっとライブに来てみた…っていうんじゃなくて、すごく思い入れを持って真摯に聴いてくださっているというか。それがダイレクトに響いてきたんですよね。で、アンコールのときだったかな。なんか、"おつかれさま"って言ってるような大きな拍手をいただいたときに、思わずグッときちゃったっていう。ここまで潰れないでやってきてよかった…みたいな」
――以前よりもライブの手応えを強く感じているBONNIEがいるんだな、って思いましたね。最近、ライブに対する意識が少し変わってきてるんじゃないかなとも感じたし。
「うん、そうですね。ライブのあり方っていうのが最近わかったところもあったりして。だから、あのツアーで得た手応えをちゃんと膨らませていくことに私は重きをおくべきじゃないかって話をスタッフともしてたんですよ。ルーツに帰るというか、こう、人と人とがぶつかりあって生み出すグルーヴの大切さは、ライブでしか体験できないものだったりするから。それが面白いって最近また強く思うようになっていたので。アルバムとライブのギャップをどう埋めるかってことは前からの課題でもあったんですけど、最近は特にそれを考えていて、そのへんが今回のアルバムにも繋がってくるんですけど」
――ああ、なるほど。
「ライブはライブ。アルバムはアルバム。それは別モノっていう感じで以前はやってたところがあったんですけど、そのギャップを埋めたいという気持ちがどんどん強くなっていって。その間を埋められるようなアルバム作りをしたい、と。
 それとあと、ライブのアンケートを読むと、"昔のあの曲を聴きたかった"っていうのがすごく多いんですよね。そういう声を聞くと、もっともっとライブをやって、昔の曲もたくさん歌いたいって気持ちにもなるし」
――歌手としての素直な気持ちなんでしょうね。
「そうですね。歌手として。パフォーマーとして。もちろんソングライターとしてでもあるんですけど、もっと昔の曲を大切にしないとダメだって思って。新作を出して、それを携えてのツアーをして、ってなると、どうしてもセットリストの半分以上がニューアルバムの曲になっちゃうわけですけど、その繰り返しを1回ストップさせてみるのもひとつの勇気かなって思えたというか。なんか今の時代、新しい曲をどんどん出すことだけが音楽をやる方法じゃないって思うところがあるんですよね。音楽業界全体が過渡期に来ている今だからこそ、それぞれのやり方、それぞれのあり方が問われているし。だから私は私のやり方で、今やりたいことをやればいいし。っていうところで行き着いたのが、このリメイク・アルバムで」
――11月〜12月のツアーを終えて、今年に入ってからその発想が出てきたんですか?
「去年からスタッフとはそういう話をしてたんですよ。もっとライブを細かくやりたい、と。で、昔の曲を歌うっていうことをもっとやっていきたい、と。それから旧譜を聴いてもらうことにもエネルギーを注ぎたいって話もしてたんです。
 もう10何枚もアルバムを出してきて、1年とか1年半でまた次のアルバムを作るということを繰り返してきて。でも、出したアルバムをもっと熟成させたいっていうかな。聴く人にとっても、1枚のアルバムがその人のなかで熟成しない間にまた次のアルバムが出ちゃうというのはどうなのかなって気持ちがあって。本当はシャーデーみたいに数年に一度新作を出してもファンが聴いてくれる…っていう、あれが理想だったりするんですけど。でもそれが許されるマーケットは日本にはないってことも当然理解しているし、だからなるべくリズムにのって出すことを頑張ってしてきたわけだけど、それでもちょっと作るエネルギーが追いついてない感じがあって」
――特にここ2作は力作でしたからね。
「うん。『ONE』を作って、で、間髪いれずに『Dear Diary』を作って。それはそれでよかったんですけど、でも、そうすると『ONE』の印象が薄れてしまう。私的にはそれがすごく心が痛くて。その繰り返しに違和感を覚えてたところもあったので」
――聴き手のアルバムの消化の仕方とかスピードが昔とは違ってきてるってところもありますよね。
「そうなんですよね。私が若い頃は、好きなアーティストのアルバムを買ったら、次のが出るまでに"これを聴き倒すぞ"って思って聴いていた。自分のなかでそのアルバムを熟成させるというか、そういう聴き方をしていたので、できれば今の人にもそうやって聴いてもらいたいし、そうやって聴いてもらえるものを作ろうという心意気でいつも作っているつもりだし。
 作る側がどんどん出しちゃうと、聴き手もそのスピードに慣れてしまって、"はい次、はい次"ってなっちゃうじゃないですか? ルーティンになっちゃうというか。だから、作る側が勇気を出して、一回スローダウンする。そうしていかないと変わらないし、音楽自体が軽視されてしまうんじゃないかという不安もあって」
――わかります。
「そういう意味でも、旧譜キャンペーンじゃないけど、"昔のアルバムにもこういういい曲がありますよ""こんな曲もあるんですよ"っていうところをちゃんと伝えていきたい気持ちになっていて、どうしたらそういうことができるかって相談をスタッフにしたりしてたんですね。でも、既に出てるものをもう1回出し直すっていうのもどうなのかなって思ったし、ベスト盤は10周年のときに出したし。じゃあどうするかってところで出た答えが、以前の曲をアレンジし直して、今の色になるようにちょっとだけ手を加えて、今の気持ちで歌い直すっていう。聴く人には、ライブで昔の曲を聴くような感覚で聴いてもらえればいいし。そういうところでこのコンセプトが固まっていったんです」
――聴き手にとっても、『ONE』『Dear Diary』と傑作が続いたので、僕がこう言うのもなんですけど、今また新曲が10数曲入ったアルバムが出たとしたら、ちょっとしんどい気持ちになったかもしれない。だから、このタイミングでオリジナルの新作ではなく、リメイク・アルバムが出るというのは、すごくいいと思う。ちょうどいいタイミングというか。
「うん。なんか、"もっとゆっくりでもいいんですよ"って言ってくれる優しいファンの方も私にはいたりするので(笑) ありがたいことに」

取材・文/内本順一

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Back Room -BONNIE PINK Remakes- Back Room -BONNIE PINK Remakes-

BONNIE PINK
New Album
「Back Room -BONNIE PINK Remakes-」


2011.09.21 Release
初回限定盤(CD+DVD)
¥2,857(本体)+税 / WPZL-30316/7

通常盤(CD)
¥2,381(本体)+税 / WPCL-10992

BONNIE PINK、初のセルフリメイクアルバム「Heaven's Kitchen」「Last Kiss」「A Perfect Sky」等数々のヒット曲をアコースティックアレンジで新録したBONNIE PINK初のセルフリメイクアルバム。
新曲1曲を含む全10曲収録。
初回限定盤にはスタジオライブ4曲を含むレコーディング・ドキュメンタリー映像を収録したDVD付。

The Sun Will Rise Again

チャリティソング
配信リリース
「The Sun Will Rise Again」

※ダウンロードでのレコード会社売上の全額を
日本赤十字社に寄付致します。

レコチョク

http://itunes.apple.com/jp/album/id428549702
http://wmg.jp/artist/bonniepink/

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