100年 MUSIC featuring Artist

Vol.6 Sam Moore

フジロックでも感動のライブを見せたソウル・マン、
今の気持ちで「サム&デイヴ」についてを語る

 サム・ムーアがデイヴ・プレイターと"サム&デイヴ"を結成したのは1961年。そこから50年経った今もサム・ムーアは現役バリバリで精力的に歌い続けている。「100年music」とは願いや夢も託した上での言葉だが、実際のところサムはその半分の年をシンガーとして生き続けているわけだ。
 今年7月には、ブルーノート東京やコットンクラブでの単独公演に加え、北海道での野外フェス「ジョインアライブ'2011」、さらには「フジロック'2011」にも出演。筆者もコットンクラブ公演とフジロック公演を観たのだが、とりわけフジロックでは降りしきる雨のなかでいつにも増して入魂のパフォーマンスを披露。大勢の観客がコール&レスポンスに応え、大きな声で一緒に「アイム・ア・ソウ~ルマン」と歌い、大きく手を振っていたあの光景が忘れられない。
 このインタビューはそのフジロックの前日に都内のホテルで行なったもの。途中で何度か脱線しながらも、サム・ムーアは実に楽しそうに笑いながら"あの頃"の話なんかもしてくれたのだった。

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――僕があなたのナマのステージを初めて観たのは<THE DAY OF R&B>というイベントでした。1982年。清志郎さん(RCサクセション)やチャック・ベリーも出演して横浜スタジアムで行なわれたものです。
Sam Moore
「ワオ! あのときに観てくれてたのかい?! そう、あれは82年だった。思い出すよ。そうやって観てくれた人の記憶に残るように私はずっと頑張ってきた。観客が喜んでくれていることが何よりの支えになるんだ。ステージに上がってみんなが温かく迎えてくれたり、誰かから自分のショウを褒めてもらえるというのは本当にありがたいことだよ。特に日本でショウをやる度にそう思う。日本のファンは本当に素晴らしいんだ。私にとって日本は特別な場所なんだよ。
例えば日本は自分の歌いたい曲を歌える唯一の国なんだ。アメリカやイギリスではプロモーターがセットリストに注文をつけてくる。つい最近もラスベガスのショウでライチャス・ブラザーズの「ふられた気持ち」なんかを歌ったんだが、あとでサム&デイヴの曲以外は歌わないでくれと言われてね。その上、毎晩同じ曲をやってくれとも言われた。歌う側としては、つまらないことだよ。だから私はこう言ったんだ。"サム&デイヴ時代の曲から逃げるつもりはない。もちろん私にとってどれも大切な曲だ。でも「ソウル・マン」や「ホールド・オン(「HOLD ON, I'M COMIN'」)」以外にも私には歌いたい曲がある"ってね。しかし受け入れてもらえなかった。昔からそれはしょっちゅう言われてたことなんだが、今も状況はたいして変わってないんだ。
でも日本は違う。君が観てくれてた1982年のライブで、私は初めてサム&デイヴ以外の曲も歌うということを実行した。それはある種の賭けだったけど、大勢の人が喜んでくれた。だからあのときのことをよく覚えているし、いつも立ち上がって一緒に歌ったり踊ったりしてくれる日本の観客の前で歌えることに私は喜びを感じるんだ」
――サム&デイヴの曲ばかり求められて複雑な思いになるということもやはりあるわけですね。
「サム&デイヴの曲をみんなが聴きたがる気持ちはわかるけど、デイヴはもういないんだ。"デイヴ以外に誰がデイヴのパートを歌えるっていうんだい?"って思うのさ。デイヴのことが大好きだったし、彼の声は本当に素晴らしかった。だから別の男性と一緒に昔の曲を歌うことは考えなかったし、これからもそういう形では歌う気はないよ。でもたくさんの人がサム&デイヴの曲を聴きたがってくれるし、もちろん自分にとっても大切な曲たちだから、今は女性シンガーたちと一緒に新鮮な気持ちで歌っているんだ」
――今のあなたから見て、サム&デイヴとは長い音楽の歴史においてどういう存在だったと思いますか?
「一言では言えないが、サム&デイヴは何か特別なものを持っていたと思う。とても可能性があった。ただ……私はハッピーだったが、100パーセント満足だったわけじゃない。完全に納得できたとは言えないんだ。それはデイヴのせいじゃなく、自分とデイヴのふたりにはもっともっと何かができるって思っていたからだ。これ以上のことができる、ってね。とはいえ、あの頃の映像なんかを観ると、「まぁいいか」とも思えてくる(笑) サム&デイヴの映像を観て私たちを認めてくれる人がいるってことだけで素晴らしいじゃないか、ってね。それだけで満足だよ。私がどう思うかってことよりも、長いこと聴き続けてくれている人がいて、今もサム&デイヴが好きだと言ってくれる人がいるっていうことのほうが大事なんだ」
――それにしても、今まで何百回・何千回と歌ってこられた歌であってもあなたは今も魂を込めて歌っているし、とても楽しそうに歌っているように見えます。
「うん。いつだって歌うのは楽しいからね。"飽きませんか?"って訊かれたりするけど、飽きることなんか全くない。ジャズやカントリーっぽい曲を歌ったりもするけど、そこにはトリビュートの意を込めている。私は好きな音楽に対して、愛を込めて歌っているんだ。生活するために歌っているわけじゃない。好きだから歌ってるんだよ。だから自然にカラダが動いてしまうんだ」

続く(次回は10/14掲載予定)

取材・文/内本順一

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Profile

サム・ムーア。1935年フロリダ州マイアミ生まれ。1961年にデイヴ・プレイターとサム&デイヴを結成し、1962年にデビュー。1965年にスタックスと契約し、「ホールド・オン」や「ソウル・マン」といったヒット曲を連発した。が、70年代に解散。互いに低迷期となり、デイヴは1988年に交通事故で他界した。しかしサムはソロ・アーティストとして復活。2006年発表のアルバム『オーバーナイト・センセーショナル』ではブルース・スプリングスティーン、エリック・クラプトン、スティーヴ・ウィンウッドらをゲストに迎えてミラクルなコラボレーションを繰り広げた。近年は来日も多く、今年の7月にはフジロックにも出演。今年のフジのベスト・アクトに挙げる人も少なくない。

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