100年 MUSIC featuring Artist

Vol.6 Sam Moore

ソウルのレジェンドが語る
ビリー・プレストンと忌野清志郎の想い出

 7月に来日し、ジャズ・クラブでの単独公演のほか、フジロックにも出演して魂のこもった熱いステージを見せてくれたソウルの巨人、サム・ムーア。そのフジロックでもとりわけ聴く者の心を揺さぶったのが、ビリー・プレストンに捧げると言って歌われた「ユー・アー・ソー・ビューティフル」と、(忌野)清志郎に捧げると言って歌われた「ザット・ラッキー・オールド・サン」だった。サムはそのようにいつも親交の深かったミュージシャンたちへステージで曲を捧げているわけだが、どんな思いで歌っているのだろうか……。ビリー・プレストンと清志郎の想い出を話してくれた。

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――あなたはライブでビリー・プレストンやレイ・チャールズ、アイザック・ヘイズら、親交の深かった亡きミュージシャンたちの曲を演奏したり歌われたりしてますよね。また(忌野)清志郎さんに捧ぐと言って縁のある曲を歌われたりもしていますが、どんな気持ちで歌っているのでしょうか?
Sam Moore
「彼らとのことを思い出し、感謝しながら歌っている。トリビュートの気持ちだね。アイザック・ヘイズはサム&デイヴのプロデューサーだったこともあり、バンドは彼の曲を演奏することをとても楽しんでいるんだ。もちろん私もね。
 ビリー(・プレストン)とはいい友達だった。そしてよき競争相手でもあった。ビリーの指は、彼の声だった。イタリアで一緒に2時間半も演奏したことがあったよ。途中でビリーが、"サミー、ちょっとトイレに行ってくるから"と言ってステージから消えてしまったことがあってね。彼がトイレに行ってる間、しょうがないから私はずっとステージで喋ってたよ。でもあまりに遅いので思わず"ビリー、どこに行っちまったんだ?!"って叫んでしまって、マネージャーが地下まで探しに行って。ようやくビリーが戻ってきたので「僕のベイビーに何か?(「When Something Is Wrong With My Baby」)」を歌ったんだけど、そのあとでビリーが言ったのが"そんなに待たせてなかっただろ?!"(笑) まったく…。まぁ私とビリーはいつもそんな関係だったよ。マヘリア・ジャクソン、サム・クック、リトル・リチャード、アイズレー・ブラザーズなんかと同じ時代を私とビリーは一緒に過ごした。いいときも悪いときも一緒だった。傷つけあったこともあったけど、ずっと一緒だったよ。私は彼のことをきちんと評価していたし、彼もそれをわかってくれていた。私は彼の父親のような存在で、ときには叱ったりもしたけど、彼を愛していた。彼もそれを知っていた。彼が助けを求めれば、私は彼のところに飛んで行って助けたものさ。ジョイス(・ムーア。サムの奥方)がビリーのために力を尽くしてくれたことにも感謝してるよ。ビリーと私は人生を分かち合ったんだ。一緒にアイザック・ヘイズのために歌ったりしたこともあったな。本当に特別な存在だったよ。
 キヨシローと初めて会ったのは、サム&デイヴで初めて日本に行ったときだった。彼は14歳くらいで、私たちにくっついてきたんだよ。ホテルの前で彼が待ってて、バスに乗り込もうとする私の荷物を持ってくれてね。なんでもやるからと言って一緒にバスに乗り込み、そのまま会場に向かったんだ。いろいろ手伝ってくれたよ。それから何年も経って、1982年に私が日本に行ったときに彼と再会した。そう、君も観てくれていたあのときだ(前回の冒頭に記した<THE DAY OF R&B>というイベント)。彼が「サムさん!」と言いながら近づいて来たときには、誰だかわからなかったよ。彼は大スターになっていた。バンドを引き連れてね。キヨシローが「ザット・ラッキー・オールド・サン」をカヴァーしているのを聴いたことがある。素晴らしかったね。それで今回、彼へのトリビュートとしてこの曲を歌ったんだ。とてもエモーショナルな気持ちになったよ」
――あなたにとって100年残るいい音楽の条件とはなんでしょうか?
「歌詞がいいこと。妥協がないこと。そしてハートで歌えること。そういう音楽は長く愛されるんだと思う。私が歌っている曲の多くは、100年残ると思うよ。昔の音楽にはハートで歌えるものが多い。私はそういう曲ばかりを選んで歌っているからね。ところが最近の音楽はというと、100年残りそうなものがなかなか見当たらない。残念だがね。私は、いい音楽はみんなでシェアすることが大切だと思うんだ」
――具体的に、100年残したい曲はありますか?
「まず、ゴスペルの曲。私が小さな頃から情熱を傾けてきたのがゴスペルなんだ。それからレイ・チャールズの曲。アレサ・フランクリンの曲。ビートルズの曲。どの曲ということではないけど、彼らの曲はみんなと分かち合うのに値するものであり、長く残っていくものだよ」

取材・文/内本順一

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Profile

サム・ムーア。1935年フロリダ州マイアミ生まれ。1961年にデイヴ・プレイターとサム&デイヴを結成し、1962年にデビュー。1965年にスタックスと契約し、「ホールド・オン」や「ソウル・マン」といったヒット曲を連発した。が、70年代に解散。互いに低迷期となり、デイヴは1988年に交通事故で他界した。しかしサムはソロ・アーティストとして復活。2006年発表のアルバム『オーバーナイト・センセーショナル』ではブルース・スプリングスティーン、エリック・クラプトン、スティーヴ・ウィンウッドらをゲストに迎えてミラクルなコラボレーションを繰り広げた。近年は来日も多く、今年の7月にはフジロックにも出演。今年のフジのベスト・アクトに挙げる人も少なくない。

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